「犯人に告ぐ」ど俄然注目株となった雫井修介さんですが、本作「火の粉」は私的には「犯人に告ぐ」よりも完成度は高いと思います。
自分が無罪判決を下した元裁判官梶間の隣家に越してくる男、武内。彼が越してきて少しづつ身の回りに異変がおき始める展開の描きこみが凄く自然で巧い。展開が凄く自然なので、リアリティに富んでおり、読む進めば進むほど本当に恐ろしくなる展開に目が話せません。
文庫版で600ページ近くありますが、雫井さんの筆力は高くとてもわかりやすくさくさく読めるので、あっという間に読める一冊です。
ただ家族劇なので、視点を一人に絞らずそのつど家族の一人の目線で物語が進むので、元裁判官が主人公ではないのでそこのところはチェックしておいてください。
この文庫のあとがきにも書かれていますが、雫井さんは女性心理の描きこみが巧い。この物語では尋恵、雪見の二人の心情が特に巧く描きこまれています。これを読んで共感できる女性は多いのではないでしょうか。